☆2000年1月1日に放送されたMBSラジオの特別番組。

この番組はこれまで不定期に何回か放送されていて、毎回すぎやま氏がメインで出て、MBSの柏木アナが進行、そしてゲーム関連者のゲストが出てきました。
この時のゲストは宮本茂氏とさくまあきら氏。いつもの柏木アナに加えて西アナも登場。では、おおまかにやりとりを載せましょう。

 

2000年1月1日MBSにて

柏木アナ「1999年は何かと忙しかったと噂に聞いておりますが」

すぎやま「いやあ僕のゲーム音楽作曲人生、もう10数年になりますがね〜。1999年が一番忙しい年でしたね。びっしり仕事が詰まってましたね」

西アナ「それはドラクエ7ですよね」

すぎやま「ええ、後半はね。いやあ前半はね〜、やっぱりドラクエ、でもね1、2。それからドラゴンクエストモンスターズ。う〜んそれからね〜、まだあったな、トルネコの大冒険2、これもかなりがんばりました。え〜それからドラクエ7でしょ。それから、並行して実はダービースタリオンとか風来のシレンとかね。でももう今年は遊ぶ、2000年は遊ぶ。決心してこないだエニックスへ行って専務に宣言してきました。「わたくし2000年はゆっくり遊ぶ年にしますから」って言ったら、「毎年そう言ってましたね」って。結局駄目になっちゃうんですよね。」

…省略…

柏木「1999年のご自分の趣味といいますか、そのへんの部分をお伺いしたいんですが。」

すぎやま「じっくりやったゲームはあんまりなくて、強いて言えばワールドアームスというのをやりましたかな。あれおととしだったかな。わかんなくなっちゃう。で、あとね〜、仕事の合間に息抜きになんかちょっと遊ぼうかっていうとね、なぜか結局スーパーファミコンになっちゃう。ありゃぁ遊びやすいんだワ。う〜ん、いただきストリートとかね。それから僕が好きでローソン行ってダウンロードしてきたファミコンウォーズ。あれはけっこう好きでね。前にも宮本さんにもお願いしたことがあるんですが。スーパーファミコンでもファミコンウォーズつくってよとか言ってね。そしたらダウンロード式でやっと出てきた。」

柏木「もう、すぎやま先生ほんとに小学生と変わんないですよね」

(笑)

すぎやま「ちょっと遊ぶにはスーファミが手軽でいい」

…省略…

柏木「ゼルダの伝説はもう最初の頃からすぎやま先生ハマってましたもんね〜。」

すぎやま「もうファミコン時代にね〜。やっぱり居心地の良いっていうかね。あのロールプレイングはね、その世界に自分がいることがとりあえず楽しいゲーム。」

…ゲームボーイの話へ…

すぎやま「ゲームボーイカラー見てね、やっぱり任天堂すごいなと思ったのは、デザインをおなかふくらまして単三電池にした。こなへんがさすがと思いましたね。最初、某メーカーが他のメーカーに対抗してうちはカラーだって出して、やったら電池2時間しかもたない。新幹線乗って東京駅で始めて途中でなくなっちゃうわけ。なんじゃこれは。」

…任天堂が新しい遊びを開発という話へ…

すぎやま「でもその新しい遊び、楽しさのしくみを考えてくれるってのはすごくうれしい。常々感じてるのは、どんどんハード、ハードが進歩して、おもしろい遊びをつくるということよりも、そのハードのデモンストレーションの為のゲームばっかりつくっていくというような傾向になっちゃうのがすごく嫌だったの。」

…省略…

柏木「今回のドラゴンクエストのできですよね。もちろん音楽をつくってらっしゃるのでよくご存じだと思うんですけど、どうでしょう?」

すぎやま「いやもうね〜、ドラクエのね〜、あのポリゴンの絵はポリゴンになってもほんとにドラゴンクエストの世界、これを絶対外さない。すばらしい。」・・・「さらに積極的に世界を広げたというかね。すごくいいですよ」・・・「絵を見てこっちもあせりましたよ。これに音楽が負けちゃいけないってんで、おしりに火がついたというか。」

…省略…

柏木「ここで一曲音楽をかけなきゃいけないんですが・・・できたら7から・・」

西「もう録音は終わったんですか?」

すぎやま「いや、レコーディングは今月末にロンドンでやるんです。まあここんとこドラクエはずっとロンドンフィルで全部そろえようっていうんでね。行くんですけど。ですからないんです音源が。」・・・「ゲーム自体は内蔵音源ですから。これもまだ細かい調整がね。これもまた堀井さんに負けず劣らず細かいとこまでこっちがこだわるもんだから。僕がいつも打ち合わせ会議用に自分で打ちこんだデータでシンセならして持っていって、こんなんでどうでしょうって。その打ち合わせの為につくるようなデモテープでよければかけちゃおうか?本邦初公開というか。何曲もあるんですよ。戦闘の曲、王宮の曲、街の曲などなどいくつか入れて持ってきたんです。」

柏木「全部ききたいけど・・・王宮の曲ってきいてみたいですね」

すぎやま「王宮?うん。5の時は王宮のトランペット。とりあえずまだ仮題ですが、王宮のホルンと称してホルン主役で」

柏木「これまでこういった物が表に出ることはかつてなかったですね。」

すぎやま「うん、初めて」

…♪♪王宮のホルン♪♪…

すぎやま「ロンドンフィルの一番ホルンね、これおそらくヨーロッパで1、2を争う名ホルン奏者。めちゃくちゃうまいの。それ楽しみなの」

…省略…

西「プレイステーションということで音楽づくりで変わったことは?」

すぎやま「スーファミでやってた時と特別変わったことはないけれども、やっぱりスーファミのハードとプレステのハードとちょっと違う部分があるんで、とにかくお願いしてハートビートの山名学さんっていう超優秀プログラマーがいるんですが、彼にサウンドドライバーをこのドラクエ7の為に組んでもらった。だからそれを縦横に駆使して鳴らしています。」

柏木「ただトルネコの大冒険ではすでにプレイステーションでなさってるわけですからね。」

すぎやま「あれはね〜、内蔵音源じゃないですから。シンセザイザーヴァージョンを鳴らしてるだけですから。だから内蔵音源でやるのは今回初めて」

西「あの、曲数は何曲ぐらいあるのですか?」

すぎやま「今までのドラクエの倍以上ですね。だから今度レコーディングしてCDつくるんですが、CD2枚組になっちゃう。」

…省略…

柏木「先生は今まで音楽上のメモリーがなかなか取れないとおっしゃってましたが、今度はどうですか?解消されましたか?」

すぎやま「しません・・・きつきつ。・・・それとねロクヨンでもスーファミでもそうですけど、持って歩けるポータブルの音用メモリーの量ってのがあるんですよね。だから全体のメモリーがいくら増えても、持って歩ける量ってのはある程度決まっちゃうんでね。だから音色数を野放図に使うわけにいかない」

…省略…

柏木「さて、今度は何の曲を?」

すぎやま「ドラクエのゲームでは城といえば街。これペアでしょ。城の曲やったから街の曲どうですか?」

…♪♪憩いの街角♪♪…

柏木「2000年のゲームはこれからどうなっていくんでしょうか?」

すぎやま「僕の感じでは、新しいハードが出て、ハードの性能をこれでもか、そういうことできるだろうっていう半分デモンストレーションのようなゲームがハードの発売と同時に出ると思うし、またハードメーカーがソフトメーカーにそういうのを要望するんですよね。で、それと同時に相変わらずハードは関係ないと、何で遊んでも面白いゲームがほんとに面白いゲームだというスタンスで頑固に守ってつくり続けるメーカー。これも絶対残っていくし、最終的にはそういうスタンスのゲームが一番ロングセラーになるんじゃないかな〜って感じはしますけど」

…終了…